いかにモノを捨てることができるか
モノが増える。人間が生活していく上では仕方のないことです。しかし、増え続けていったら結局、人間の生活するスペースが無くなってしまいます。
考え方は人間のダイエットと同じです。増えたモノは減らさないといけません。これが結構大変なわけです。整理収納アドバイザーの仕事は、クライアントのモノを整理しようという意識を促進(ファシリテイト)させることです。
モノを整理し、自分とモノとの関係、モノの適正量を把握できるようになれば、収納はある意味テクニックですから、他の人のテクニックを自分なりにアレンジしていけばいいのです。もちろん、整理収納アドバイザーは、テクニックの引き出しをたくさん持っていることが大切なのですが。
さて話を実家に戻します。実家においては、まず何よりも整理です。収納のことはあまり考えなくていいと思います。整理という言葉と片付けという言葉が出てきますが、整理はきれいに片付けるといった意味合いが強く、こと実家問題に関してはきれいにというよりは減らすことが重要になってきますので、片付けという言葉の方がしっくりきます。そして片付けとは、いかにモノを捨てることができるかに尽きるのです。
「捨てる!」技術
「捨てる!」技術(辰巳渚著、宝島社新書)という本があります。私の好きな本です。
その本には、捨てるためのテクニック10か条が書かれていますが、
こと実家の片付けにおいては、
- 見ないで捨てる
- その場で捨てる
- “捨てる基準”を決める
- “捨て場所”をたくさん作る
- 小さなところから始めてみる
の5か条がよく当てはまるのではないでしょうか。
実家を片付ける3つのメリット
できるだけポジティブな気持ちで実家の片付けに臨むために、あらかじめ片付けのメリットを頭に入れておくといいと思います。
1.探しモノが減る。同じモノを買ってしまうことが減る
「あれ、あったかな?」まあ、とりあえず買っておこう。こんな経験ありませんか。モノは増えるし、お金は無駄になるし。片付けることによって、探しモノが減り、以前から探していたものが見つかり、同じモノを買ってしまう無駄が減ります。
また高齢の親の場合、いざという時の緊急時に、どこに何があるかが分かっていることは大きなメリットになります。
2.家の中が安全になる
バリアフリーというと段差をなくしたり、手すりをつけたりということを考えますが、まずは自分でできるバリアフリー対策、それが片付けです。モノにつまずいて転倒したり、足の小指をぶつけて痛い思いをしたり、家の中にモノが多いといろいろ危険です。地震などの非常時には落下物が減り、避難もしやすくなりますので、防災対策にもなります。
さらに片付けは自分でできる耐震改修なのです。2階のモノを減らすこと。これはれっきとした耐震改修です。このことについては次のコラムに書きます。
3. リフォーム工事にスムーズに入れる
高齢になると介護のためのリフォームなどが必要になってくることがあります。その際に片付けからスタートとなると工期が余計にかかります。また、あわててしまい、捨ててはいけないものをうっかり処分してしまったなんてこともあるかもしれません。あらかじめ片付けが終わっていればスムーズに工事に入ることができます。
実家の片付けで知っておきたい7つのポイント
1.できるだけ早い段階の方がいい
これには3つの理由があります。1つめは、何よりも片付いていない家は時間の経過とともにさらにモノが増えてしまうこと。2つめは、親も片付ける人間も体力的にしんどくなっていってしまうこと。3つめは、片付けるかどうかの判断能力、捨てる基準を決める能力が落ちていってしまうことです。
2.まずは自分の部屋を片付ける
これは捨てるためのテクニック⑤にもつながりますが、実家で小さなところ(というか身近なところ)といえば、自分の部屋です。実家に自分の部屋があり、まだモノが残っているようでしたら、手始めに自分自身のモノを片付けましょう。親に対する良いメッセージにもなります。
片付けに入る前に、部屋の中にあるはずで、捨ててはいけないモノとして思い起こされるものを書き出してみましょう。まずはそれを探し出すことをモチベーションにします。もしも捨ててはいけないモノが思い浮かばないのであれば、すべて捨ててしまっても問題ないということかもしれません。
次に部屋の中を大きく3つに分けましょう。これは捨てるテクニック④です。基本的には、不要品コーナー、一時保管コーナー、必要品コーナーの3つです。部屋の中のモノをこの3つに分別していきます。不用品コーナーを部屋の外に設けることができれば、いったんすべてのモノを外に出して、必要なものだけ部屋に戻すことでスッキリ効率的に片付けができます。
この分別において、捨てるためのテクニック①~③を駆使します。基本、分別はその場で捨てる、3秒ルールを適用しましょう。そのためにも基準づくりが大切です。
3.捨てられない原因を理解しておく
自分の部屋が片付いたらいよいよ親のモノです。まず大事なこと。親のモノを片付ける際に「こんなもの、なぜ取っておくの」は絶対に禁句です。捨てられないのには原因があります。ひとまず、親にとってはすべてのモノが大切なのだという心構えを持ちましょう。
捨てられない原因についてはほとんど以下のようなことではないでしょうか。
- モノがない時代の思いが強い モノを大切にしなければいけないという思い。しかしそれはモノを捨ててはいけないという意味ではない。使われていないモノはじつは大切にされていないということを理解することが大切。
- 迷信 ぬいぐるみや人形など
- まだ使える、壊れていない
- 捨てたら申し訳ない 人からいただいたモノは特にそういう思いが強いと思います。
- 小さいモノ これはいったんグループ分けして少し「大きなモノ」にしてしまいましょう。
- 捨て方がわからない
- 高価なもの
捨てられない原因を知っておけば、その原因をどうやって取り除けばいいかを考えればいいということになります。
親の部屋の片付けも、やり方は自分の部屋と同じです。スペースを分け、基準をつくって(自分の時よりは少々緩やかでもいいかもしれません)分別していく。それでも一時保管品や必要品ばかりが増えてしまった場合は、捨てるのではなく、他の人に使ってもらうという考え方に変えて、そういった業者さんに依頼するのも1つの手です。
そして私は、ここで孫(ひ孫)の出番だと思うのです。これこそが実家の片付けならではのことだと思うのです。このことについては後でふれます。
以前リフォームをさせていただいたお宅での経験ですが、高価な食器を来客用として戸棚の奥にしまったままほとんど使っていないというケースがありました。これは捨てているのと同じことです。来客用なんて言わずに、高価な食器も日常でどんどん使うべきです。モノは使わなければ、捨てたのと同じです。
4.計画を立て、家族との情報共有をしておく
片付けは、段階的に進めていくことが大切です。一度にやろうとすると、途中で挫折してしまう可能性が高くなります。ある程度期間を定めて段階的に、そして他の家族がいる場合には協力が得られるかどうかも確認しましょう。
また、その場所のゴミ出しルールの確認も必要です。とくに粗大ごみや不燃ごみについての確認をしておく必要があります。
実際に片付けを行っていて、「一時保管スペース」に入ったモノについては他の家族にも確認をとった方がいい場合もあります。後からトラブルが発生すると、まったく先に進まなくなってしまう可能性がありますから。
5.思い入れのあるモノは、いったん寝かせる
思い入れのあるモノを片付けるのはなかなか難しいものです。片付ける前に思い出に浸ってしまってちっとも先に進まないということになりがちです。片付けのコツは捨てる基準を決めて、短時間でその判断することです。でも迷ってしまうものが出てくるもの。それは「一時保管スペース」に入れることでいったん寝かせて、時間をおいてみましょう。
6.片付け過ぎない
これも実家の片付けでは大切なことだと思います。これまで暮らしてきた環境と大きく変わってしまうことは、住んでいる人にストレスを与えてしまう場合があります。それが原因でせっかく片付けをしたのに、リバウンドして余計にモノが増えてしまうことさえあります。このあたりは人間のダイエットによく似ていますね。同じような理由で、私は、高齢の方の住まいをリフォームする際に、大きく間取りを変えないよう心掛けています。
7.孫(ひ孫)にあげる
私は実家の片付けには孫(ひ孫)の存在が鍵になると思っています。まず、実家にある昔のマンガ、絵本、ゲーム、おもちゃ等は孫にとっては宝物になる可能性があります。実家の片付けを、孫と一緒にお宝探しと位置付ければ、結構楽しい作業になる可能性があります。そして捨てるのではなく、孫にあげるのであれば、モノを手放すことが容易になると思います。孫としては、その場でいらないと思ってもいったんもらってあげて、代わりに処分してあげたらいいと思います。これもおじいちゃん、おばあちゃん孝行ではないでしょうか。