実家の建物は安心・安全なのか

実家耐震

  

実家の耐震性を考える

 能登半島地震で被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。

 日本は地震大国です。地震発生のメカニズムはいろいろありますが、日本列島は、世界の中でも地震発生リスクのとても高い場所にあります。いつ地震が来てもおかしくないのです。私自身、自分の人生の中でこんなに何度も大きな地震被害を目の当たりにするとは思ってもみませんでした。被災した建物を見るたびに、命を守る最低限の対策はしておかないといけないと強く感じます。

 実家の耐震性を考える上で参考になるのが、「誰でもできるわが家の耐震診断」というリーフレットです。インターネットでも見ることができます。私はこのリーフレットを使って、練馬区住宅簡易耐震診断のお手伝いもしています。

 10の問診に対して1か0で回答し、10点中何点になるかで診断をします。ただし、この診断はあくまでも簡易的なものであるため、たとえ10点満点でも専門家に診てもらいましょうという結論になっています。それではあまり意味がないように思うかもしれませんが、この10の問診は、住宅の耐震性に関して、とてもポイントをついた内容になっています。我々は各問診の回答を1にすべく耐震補強をしているといってもいいと思います。一度ご自身でも診断してみてはいかがでしょうか。

 ところでこの問診表の最初の問いは、「建てたのはいつ頃ですか?」となっています。そして1981(昭和56)年5月以前に建てた建物は評点が0になります。ご存じの方も多いと思いますが、1981年5月以前に建てた木造住宅は、当時の建築基準法に則って建てたとしても必要とされる耐力壁が少なく、耐震性が担保されていません。その後の大きな地震で実際に倒壊する被害を受けています。そのためこの対象建物については、国を挙げて助成金を出して耐震補強を進めています。

 しかし、耐震の仕事をしている我々は、1981年以降でも、2000年5月以前に建てた建物は耐震性が不足している可能性があると考えています。このことは熊本地震の際に倒壊した建物によって検証されています。今後は、自治体によりますが、耐震補強の助成対象が2000年5月以前に建てられた建物まで拡張される予定です。

 それでは1981年から2000年までに建てられた建物はどこに耐震性の問題があるのか。この説明をする前に、建物にかかる力について簡単にお話しします。建物にかかる力は大きく2つに分かれます。建物の上からかかる力、例えば建物自体の重量や積雪による重量のようなもの、これを鉛直荷重といいます。一方、建物の横からかかる力、例えば地震や風による力、これを水平荷重といいます。そして建物はそれぞれに、鉛直荷重に対しては柱や梁が、水平荷重に対しては壁や筋交いが力を負担して抵抗するように設計されています。

 したがって一言でいうと、耐震補強は、壁や筋交いを補強すること、となります。ただし、やみくもに補強すればいいというわけではなく、全体にバランスよく補強しなくてはならないのです。例えば建物のある一面だけを補強してしまうと、地震時にその面はあまり動かない半面、他の面がより大きく振られてねじれ破壊のような被害が起きてしまいます。それから強い壁をつくることで逆に変形性能が抑えられ、柱、梁、筋交いなどの接合部に大きな力がかかって、場合によってはそこが外れて倒壊してしまう恐れがあります。そのため接合部には負担する力に応じて金物を設置するようになりました。

 2000年以前に建てられた建物に関しては、このあたりのことが徹底されていませんでした。その弱点を熊本地震の被害状況が実証しています。実家の建物が2000年よりも以前に建てられた場合には、耐震診断等で耐震性を確認することをおすすめします。

実家の断熱性を考える

 最近の住宅は省エネに対する考え方が進み、さらに法律によっても高い基準が設定されるようになり、断熱性能がとても向上しています。

 しかし、ほんの少し前まで日本の住宅の断熱性能は、かなり貧弱な状況でした。壁の間に断熱材が入っていたとしても、断熱性能が低い上に気密性が悪く、スカスカの状態になっていました。調査の際に、壁に入れた断熱材が時間経過とともにずれ下がって、まったく意味をなしてないような状態の家を何度も見ました。

 断熱の基本は家全体を隙間なく断熱材で包み込むことです。しかし実際に住みながらの改修工事でこれを実現するのは、かなり大変です。そこで家の中で最も熱が逃げやすい窓廻りを断熱性能の高いものに変えましょうといったリフォームがよく行われています。上の写真は、住んでいない状態で改修したときのものです。

 窓の次に断熱改修を行うとすれば、屋根から伝わる熱を遮断することでしょうか。小屋裏部分に断熱材を充てんするリフォームなどをします。実家では、2階は夏暑くていられないなんて言う話をよく聞きます。それならもう2階は使わないと考えてしまえば、2階全体を断熱層とみなしてしまうこともできると思います。これは私の考える実家平屋化計画のポイントの1つです。

 さて、ヒートショックという言葉を聞いたことがありますか。室内間の急激な温度差によって、脳や心臓などに大きな負担がかかってしまうことです。場合によっては命に関わる衝撃を受けることもあります。居間から廊下を通って浴室やトイレに行くような間取りの場合は、特に各室の温度差が大きくなりやすく危険性が高くなります。ヒートショックの危険性は高齢になるにつれて大きくなりますから、高齢の親が住んでいる場合は、特に注意が必要です。居室と水廻りをダイレクトに結ぶようなリフォームは、高齢者においては動線に無駄がなく、ヒートショックを軽減することにつながると思います。下の写真はトイレ、洗面、浴室を居室と直結させるようにリフォームした際のものです。

  

  

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